
雲描き
昭和の特撮映画の背景は空に見立てた壁(ホリゾントと呼びます)に雲を作画するのが普通でした。東宝では特注したキャンバス布を張り、撮影所によってはベニヤ板で壁を作ります。撮影所には背景部という専門職がいて、作品の狙いによって様々な雲を描き分けていました。その中でも、円谷英二監督時代から活躍されている島倉二千六さんという巨匠がいます。今回も島倉さんにお願いしたかったのですが残念ながら実現できず、私自身が作画することにしました。
一人ではやりきれないので、福岡からグラフィックデザイナーの田添玖美さんに応援に来てもらいました。田添さんも広い壁に雲を描くのは初めてですが、以前作品を観てこの方なら大丈夫という確信があったのでお誘いし、期待通りとても上手にサポートしてもらいました。
写真2枚目が描いている場所から見下ろした壁の見え方です。この状態で1枚目の離れた場所から見ると、どういう位置のどういう形を描いているのか把握するのがなかなか大変なところです。それが出来ないと、描いては離れて確認し、戻って描いてまた離れて、を何度も何度も繰り返すことになります。
入道雲は大きい塊なので、その中で立体感を出すのが苦労しました。雲も光の向きで明るいところと暗いところが出来ます。理屈は分かっていても広い面積を色合いとタッチだけで描き分けるのは手間がかかりました。阿蘇神社の背景に関しては、これぐらいの範囲であれば全体が見渡せるので迷わず筆が進んで、2時間足らずで描きあげました。


