
メイキング展示
映像のメイキングではなく、ガラスケースや壁に展示してある熊本城や宇土櫓の作業工程解説用のメイキング展示についてお話します。
今回の展示は特撮美術を前面に打ち出した、これまでにない展示となりました。これは特撮美術一筋に携わってきた私にとっても、同じくミニチュア製作を長年稼業としてきたマーブリングファインアーツ社にとっても名誉あるありがたいお話でした。過去美術館や博物館ではどんなに良く出来たミニチュアを展示しても、それを誰がどういう技法で作ったかをお客さんに知ってもらうという意図はほとんどありませんでした。特撮博物館がその先駆けになっていますが、今回は一切特撮キャラクターが不在で、実在する熊本の建築物だけです。まさにミニチュアとその製作プロセスが展示の見せ場になります。
マーブリングさんの時間的な負担も考え、当初シンプルな展示プランを私が提案しました。最初の2枚のイラストがそうです。ところがこれは伊原弘さんからあえなく却下となります。私が遠慮しすぎたようで、「美術館で展示する物としてはあまりにもレベルが低く、本当の苦労や技巧が伝わらない」というのです。
かくして、新規に展示のための本格的メイキング模型が製作されることになりました。製作途中の状態を別に用意しなくてはなりません。ただでさえ間に合うかどうかというピンチの状況で、材料も人手もさらに要する事になりました。しかし最終的には、マーブリング社を挙げての全力の取り組みとなり、素晴らしいメイキングの展示物が出来上がってきました。チラシの裏にうっすら印刷されている絵がこの時の没プランのなごりなのです。 (次号へ続く)




