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みなまたあしたきたくなる 食を巡る水俣・芦北の旅

vol.1 漁師の町・芦北町で出会う幻のえびと、それを守る者たち

  • 情報掲載日:2019.09.21
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

熊本の県南に位置する芦北・津奈木・水俣エリアは豊かな海や山がある『食材の宝庫』。この連載は、その時期に旬の食材の生産者と、その食材を使った料理を提供するお店を紹介するシリーズです。取材協力:水俣・芦北観光応援社

海の町に行列を作る。
人を魅了するエビ料理とは?

熊本県南部にあり、不知火海に面した海の町・芦北。人口約1万6千人のこの町に、週末になると行列を作る一軒の食堂があリます。そのお店の名前は『えび庵』。

週末になると、熊本市内をはじめ、県外からのお客さんが押しかけるそう。行列の皆さんのお目当ては、「幻のエビ」とも言われる“足赤えび”を使った料理の数々。サイズは20センチ前後と大きく、エビの甘みを存分に感じることができます。えび庵では、すベて不知火海産の天然物のみを使っていることも特徴です。特に人気なのが、大きな足赤えびを2尾も使った“足赤えび天丼”(1,800円、みそ汁付き)。
※漁の状況によって九州産を使用する場合あり
※消費増税に合わせて料理内容や料金を改定いたします。

「サクッ」「プリッ」食べた途端、口の中で奏でる二重奏。思った以上のプリプリ具合に、食べた皆が驚くというエビ天は感動モノです。また、毎日手作りしているという自家製のタレが、濃厚なエビの甘さと相まって、口いっぱいに頬張ることの喜びを感じることができます。また、人気を二分するのが、足赤えびを丸ごとフライにし、お重にドンと乗せた“足赤えびフライ重”(1,800円、味噌汁付)。どちらも食べ応え満点で、皆がお目当てにするのも納得です。さらに、芦北町沿岸の郷土料理でもある“えびめし”を主役にした“えびめしセット”などもあるそう。

希少な海老を惜しげもなく使った“足赤えびフライ重”(1,800円、味噌汁付)
希少な海老を惜しげもなく使った“足赤えびフライ重”(1,800円、味噌汁付)

店を切り盛りするのは、オーナーの遠山菊江さん。26歳の時に芦北町の漁師の家に嫁ぎ、自身も船に乗り漁をする現役の漁師なんです。そんな遠山さんに「なぜ幻のエビなんですか?」と問うと、「県外でも熊本市内でもほとんど出回らんとですよ」とにこやかに答えてくれました。

「足赤えびは漁獲量が少なくて、熊本市内の市場なんかでは滅多にお目にかかれないんですよ。漁も特徴的で、芦北町はうたせ船を使った漁を今でも行っているんです」と遠山さん。

“うたせ船”とは、およそ400年前に瀬戸内海で始まり、明治初期に芦北に伝来した船。白い帆を上げて紺碧の不知火海に浮かぶ姿は、“海の貴婦人”とも呼ばれています。7つの袋網を海底に仕掛ける伝統漁法・底引き網漁で海産物を獲り、新鮮な美味しさを届けています。また、昭和56年より観光船としても活躍しています。

うたせ船に乗りながら、食堂も営む遠山さん。お店の人気と反比例して漁獲量が減っている事も懸念されています。「うたせ船に乗っている人たちの高齢化も進んでいるんですよ。船に乗っている人もだいぶん減りました。80歳ぐらいの人が乗っている船もあるんですよ。それでも“おいしい”と評判を聞きつけ足赤えびを目当てに芦北町にいらっしゃる方がいる限り、美味しいエビ料理を提供し続けていきたいです」と話します。

2017年4月のオープン以来、リピーターやファンをたくさん持つ人気食堂となった『えび庵』。そこで笑顔で迎えてくれる遠山さんの話を聞いて、もっと芦北の海について知りたくなったので、とある人に会いに行く事にしました。

自然を守って漁を続けたい。
「美味しい」の先に見えたもの

芦北町漁協で迎えてくれたのは、漁協の所長であり、現役の漁師でもある上塚末博さん。「上塚さん、正直、今の芦北の海はどんな状況なんでしょう?」と疑問をぶつけてみました。

「先ほど食べて来られた”足赤えび”や、少し小ぶりの“石えび”と呼ばれるエビたちの漁獲量は、10年前は5トンだったのが、昨年2トンにまで減少しています。原因の1つは、技術の進歩に伴い漁が機械化したため。小さなエビでも獲れてしまうので、成長する前に獲られてしまうわけですよ。2つ目の原因としては、海底の環境悪化もあると思います。冬場は砂地を削って潜っているエビを獲る漁もしていて、自然と砂地を活性化させていたんですけど、規制がかかってしまいあちこちで出来なくなってしまったんですよ。この10年で海もだいぶん変わりました」と上塚さん。

それでは、これからの芦北の海を守っていくために、なにか出来ることはあるのでしょうか?

「来年、漁師皆で海底を耕す海底耕運をしようと計画中です。昔のような海に戻るまでは数年かかるかもしれませんが。また、第2・4土曜日は漁に出ず、『自然を守ろう』という日にちを取り決めました。さらに、海水温の上昇もこの環境悪化の原因になっているんですよ。なので、温暖化を止めようという意識をひとりでも多く持ち、行動に移す事でも、この環境悪化は止まると思います。うたせ船は90年前に比べれば4分の1ほどに減少している現状です。高齢化で後継者がいない事にストップをかけるため、県外から人員を募集したりするなどしています。今考えている策は、皆で絶対成功させよう!と団結していますし、私自身も上しか見ていないですよ」。

素材の圧倒的な旨さを引き上げる食堂。そして海の未来を思う漁師たち。海の町で出会ったエビ料理とそれを支える人たちは、海の水面のようにキラキラと輝いていました。


※2019年4月より、土・日曜、祝日限定で観光うたせ船の定時便(要予庵・2名〜)がスタート。午前便が『えび庵』のごはん付き1名4,500円。午後の便が食事無しで1名3,500円。10月31日まで「九州産交ツーリズム」にて予約受付中なので、気になる方はぜひ。

Information

芦北うたせ直売食堂 えび庵
住所
葦北郡芦北町計石2963-11
電話番号
0966-83-8888
営業時間
11:00~15:00(オーダーストップ14:00)
休み
水・木曜、年末年始
席数
30席
駐車場
50台

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