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みなまたあしたきたくなる 食を巡る水俣・芦北の旅

Vol.5 自然と人を思い生まれる。優しい甘さの黒糖

  • 情報掲載日:2020.02.07
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

熊本の県南に位置する芦北・津奈木・水俣エリアは豊かな海や山がある『食材の宝庫』。この連載は、その時期に旬の食材の生産者と、その食材を使った料理を提供するお店を紹介するシリーズです。
取材協力:水俣・芦北観光応援社

海風であまく育つ
唯一無二の黒糖づくり

 日々の料理やおやつに欠かせない調味料である砂糖。
毎日食べるものだから、できるだけ体に良いのが嬉しいというのが本音。
そこで注目されているのが芦北・水俣で栽培されている「黒糖」です。
海風が当たる芦北・水俣地域では、黒糖を作る文化が古くから受け継がれてきました。
芦北町にある『ばらん家(ち)』では、不知火海を臨む畑でサトウキビを栽培、製糖し様々な商品を作っています。
注目されるのはその栽培方法。
3〜4年熟成させた竹パウダーを堆肥にし強い土壌を作り、害虫駆除や手作業での除草には自家製の竹酢液を散布するのみで、無農薬を貫き12月の収穫を迎えます。
また、黒砂糖の質を高めるために3メートルほど伸びたサトウキビの糖度の高い根から1.5メートルの部分しか収穫しないそう。
残りの部分は霜除や、来年の株として大切に保存しています。
収穫したサトウキビは圧搾機で絞り丁寧に焚き上げた後、混ぜたりと煮詰めたりと驚きの手間と労力をかけられ砂糖になるのです。

 ここ『ばらん家』は障害者支援施設として2006年に設立。
精神障害を抱える人たちが自然に触れることで病を克服できるようにと始まったのがサトウキビの栽培でした。
「障害を持った人というのは、環境と一緒。自然を大事にしていくという気持ちで栽培に取り組んでいますよ」とは代表の松原久美子さん。
無農薬・無肥料という純度の高い農業の姿勢も「すぐに口に入れられる安心で安全なモノを作りたい」との思いが反映された姿なのです。

 出来上がった黒糖はさくさくの食感で、口溶け抜群。
昔懐かしい黒糖本来の味が楽しめます。
甘さがくどくなく、スッキリとしたキレとわずかな酸味さえ感じる味わいは、「ばらん家」の黒糖ならでは。
一度黒糖にしたものを溶かした“黒みつ”や、黒糖になる前にサトウキビから絞り出し、煮詰めて取り出した“黒糖蜜”など、どちらもサトウキビのエキスが濃縮されています。
地元ではそのまま食べる人もおおく、料理の旨味づけやお菓子作りなどにも使えるので、知る人ぞ知る“地元の味”として愛されているのです。

黒糖のことを一つひとつ丁寧に教えてくださった副理事長の松原孝樹さん
黒糖のことを一つひとつ丁寧に教えてくださった副理事長の松原孝樹さん

黒糖が紡ぐ
美味しい連鎖とは

 思いの込もった黒糖とタッグを組んだのは、相反する存在である「塩」。
美しいリアス式海岸が続く“御立岬”に 地底1000メートルの源泉から塩を作る製塩施設『塩むすび館』があります。
ここで製塩した塩“温泉塩”は御立岬温泉の源泉水を100パーセント原料としており、製造過程で発生する人体に不要な物質を除去している安心・安全な温泉塩です。また、カルシウム分を多く含んでおり、自然のミネラルをそのままいただけるような感覚とまろやかな口当たりが特徴。
味がしっかりしており、塩自体に旨味を感じることができ、黒糖との相性が非常に良いのです。

塩を使った加工品としては、香ばしさと黒糖と塩のハーモニーがクセになる“黒糖ラスク”と、もともと作っていた塩飴のノウハウを活かし独特の「甘じょっぱい」味わいが楽しめる“黒糖塩飴”です。
「塩も黒糖も、同じ芦北で作られる安全・安心な生産物。
よりこの地方の良さが伝わると思い開発にいたりました」と話すのは塩づくりを担当する山崎哲成さん。
数年前から芦北町の特産品になりつつある“温泉塩”ですが、同じ町内で偶然にも塩と砂糖が日の目を見る、というのはなかなか粋な気がします。

 ラインナップはお菓子のみと思いきや、意外なコラボレーションを果たしたのが“ビール”です。
お隣の水俣市、不知火海を望む場所に立地する『福田農場』では、レストランをはじめ、柑橘類を加工する工場や直売所、ビールの醸造所まで構える大きな施設。
ここで25年前より始まったのが、観光客誘致のためのクラフトビール作りでした。
クラフトビールブームが加熱する中、全国的に地域性のあるものに焦点が当たる傾向になり、目を付けたのが黒糖でした。
「ビールを作りながら、同じ芦北・水俣地方で頑張っておられる『ばらん家』のブランドを背負える事は、私たちにとってすごく有難い事」と話すのは工場長の脇畑雄一郎さんと醸造を担当する服田浩明さん。

左が服田さん、右が脇畑さん
左が服田さん、右が脇畑さん

 “あしきた黒糖浪漫”と名付けられたそのビールは、見た目は黒ビールのように真っ黒。
グラスに注ぐと、「ぷつぷつ」と立つ泡にまで黒糖の香りが感じられ、なんとも面白い!
キレとコクのバランスが秀逸で、独特の風味は和菓子などにも合うとか。
こちらは3月上旬の発売に向けて最終調整中です。

 重く長い公害の歴史を抱えた水俣・芦北地区。
だからこそ美味しいものを。
だからこそ一人でも多く幸せになるものを。黒糖と、それにまつわる物語は、地域と人と自然をたくさん思う人々の心で、今も生かされていました。

ブラック・シュガー工房 ばらん家

Information

ブラック・シュガー工房 ばらん家
住所
葦北郡芦北町大字佐敷443-79
電話番号
0966-82-4990
休み
不定
駐車場
あり
備考
つなぎ百貨堂他、管内道の駅・物産館で購入可能
製塩所 塩むすび館

Information

製塩所 塩むすび館
住所
葦北郡芦北町大字田浦町174
電話番号
0966-87-2557(御立岬温泉センター内)
休み
要予約
駐車場
5台
リンク
御立岬公園 道の駅・たのうら【熊本県芦北町のリゾート施設/道の駅】
備考
体験プログラム「かんたん塩づくりコース」500円(要予約)もあり
福田農場

Information

福田農場
住所
水俣市陳内2525
電話番号
0966-63-3900
営業時間
9:00~17:00
休み
なし
駐車場
多数あり
リンク
福田農場 | うれしい食の風景を望む。

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