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みなまたあしたきたくなる 食を巡る水俣・芦北の旅

Vol.6 土地と人の思いが織りなす 日本酒の物語

  • 情報掲載日:2020.03.06
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

熊本の県南に位置する芦北・津奈木・水俣エリアは豊かな海や山がある『食材の宝庫』。この連載は、その時期に旬の食材の生産者と、その食材を使った料理を提供するお店を紹介するシリーズです。
取材協力:水俣・芦北観光応援社

天然醸造の日本酒製造。
受け継がれる製法と今後の挑戦

 日本酒造りに適さない温暖な気候の県南で、酒造りに奮闘する酒造があります。
それがここ津奈木町の『亀萬酒造』。
大正5年(1916年)に創業。全国最南端の日本酒専門製造元として長年風土に根ざした酒造りをしてきた蔵元です。

県の南部に位置する大関山の清らな伏流水と熊本の酒米、そして守り続けている伝統的手法で織りなす日本酒は、ふわりと香り、柔らかな印象。
食事と共にいただく食中酒として人気で、今まで日本酒を敬遠していた女性をはじめ、全国にファンを持つほどになっています。

 人気の秘密は手造りならではのこだわりの製造方法にも。
主原料である米は、精米、洗米、蒸米という3段階の工程を踏み、やっと麹造りへと移ります。

その後、酒母造り、もろみ仕込み、しぼり、濾過、最後に火入れ、貯蔵、瓶詰めを経て出来上がります。また、気候としても酒造りにはギリギリの環境であるため、仕込み時に氷を入れる独特の製法を続けているそう。
恐ろしく手間がかかる酒造りを社員一丸となって取り組み、地域に愛される酒を生み出しているのです。

昨年念願叶って、純米吟醸酒「萬坊(まんぼう)」が、世界に誇れる日本酒としてその年の一級品に贈られる「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2019」のプレミアム純米部門で最高金賞を受賞し、ますます注目度が高くなっているようです。

 「最近米作りを始めたんですよ」と話すのは、四代目で専務取締役の竹田瑠典さん。

「これだけ美味しいお酒が県内外に溢れている中で、どう差別化していくかと考えた時に、蔵の背景を伝えるために、自分たちで作る“津奈木米”で酒造りをしたいと思ったんです。米農家としては食米を作る地域で、そこで、山田錦作って!とお願いするのもハードルが高い話。私たちで成功事例を作ることによって、少しでも周りの農家さんが協力してくれる環境作りに取り組んでいます。でもまだ1タンクいくかいかないか程度しか出来ていないので、いずれは全部のタンクを自家製米で作れたら理想的です。自分たちで米を作ったら、酒の仕上がりに言い訳が出来ないからですね」。

受け継がれる安定した酒造りはもちろん、常に美味しい酒を作るためのアップデートに余念がないのが伺えます。

また竹田さんは今後についてこうも語ってくれました。
「飲食店の料理とうちの酒との“ペアリング”に挑戦したいと思っています。食事と飲める美味しい酒として、色々と挑戦していきたいですね」。

酒粕づくりの様子
酒粕づくりの様子

食を育む
酒かすのちからとは

 日本酒を作る際、もろみを圧搾した時に出る搾りかすのことを“酒かす”と言います。
その酒かすを利用し、新たな食に繋げている人たちがいました。
『亀萬酒造』の酒かすを使った漬物作りをしているのが芦北町で漬物と味噌を作る工房『すずめ』さんです。
実はここ、過去に日本一の漬け物に輝いた実績をもつ知る人ぞ知る漬物屋。
代表の尾崎吉秀さんは10年以上前に「酒かすにはパワーがある」と確信し、自身の漬物作りに活かしてきました。

「酒かすには栄養が豊富に含まれていて体に良いという事を聞いて、すぐに亀萬さんに行き、酒かすを買ってきて試行錯誤してきました」。
その結果誕生したのが“酒粕漬”です。
自家製の白うりなどの野菜を酒かすに漬け込む事で、独特の酒粕の風味とまろやかな味わいの漬物に生まれ変わっているのです。
挑戦を惜しまず旬の物を旬の時に漬け込み、唯一無二の味わいを生み出している尾崎さん。
「地元は地元同士、助け合って生きていかなきゃいけないよ」と笑顔で話してくれました。

 「酒かす」で面白い取り組みも。
迫力のあるボリュームと肉の味わいに定評がある芦北町のステーキ工房『ダ・ロープ亭』。
山あいにあるにも関わらず、年間約1万人の来客数を誇るお店です。
ここの自慢はヒレやサガリのブロック肉ですが、今春より新たにオリジナルブランド牛“不知火牛(しらぬいぎゅう)”がお目見えします。

約2ヶ月熟成することで旨みが凝縮されます
約2ヶ月熟成することで旨みが凝縮されます

店を経営する『綱田牧場』では、現在この牛を10頭ほど飼育しており、牛の飼料として「酒かす」を使っているそうです。
酒かすを混ぜる事で、脂身がほんのり甘く感じ、柔らかい肉質を実現。
豊富な栄養素を含み、甘みを感じる事もあって、牛たちも進んで食べている姿が印象的です。
「酒かすを飼料として使う提案を『亀萬』さんからいただいたんです。物は試しにと、牛に食べさせる前に、自分で甘酒を作って飲んでみたら、これがすごく美味しくて。牛に与えたらいいだろうなぁと、確信しましたね」とは社長の綱田圭吾さん。
他にも八代のいぐさを牛舎に敷いたりと、県南地域に残る産物を再利用出来ないか模索中との事。

「近いところだと柑橘類や牡蠣の殻など使えるんじゃないかな。まだ始めたばかりで手探りなんですよ。だからこそ失敗してもいいと思っています。普通に育てるんじゃ面白くないですもん。ファンも応援してくれる人もこの町にはたくさんいてくれていますからね。本当に心強いです」

 いい土地にはいい酒がある。そう信じてならない今日この頃ですが、酒とそこから派生するもので、この土地には豊かな食が循環しているように感じました。

亀萬酒造

Information

亀萬酒造
住所
葦北郡津奈木町大字津奈木1192
電話番号
0966-78-2001
営業時間
9:00~17:30
休み
不定
駐車場
あり
リンク
亀萬酒造【日本最南端自然蔵の日本酒製造元】日本酒通販
五色味噌漬本舗 すずめ

Information

すずめ
住所
葦北郡芦北町田浦862
電話番号
0966-87-0052
営業時間
9:00~17:00
休み
不定
駐車場
あり
リンク
すずめ
ステーキ工房 ダ・ロープ亭

Information

ステーキ工房 ダ・ロープ亭
住所
葦北郡芦北町大字高岡654-2
電話番号
0966-86-1929(完全予約制)
営業時間
11:30~14:00/17:00~20:00
(土・日曜、祝日は11:00~15:00/16:30~20:00)
休み
月曜(祝日の場合は火曜)
駐車場
あり
リンク
熊本のステーキ工房 ダ・ロープ亭

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