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《熊本市中央区/スナック ルノアール》おいしいエッセイ #02

もういい大人なのに、お腹がすくとあきらかに機嫌が悪くなる、食いしん坊のふたり。読めば必ず食べたくなる、美味しさ満点のエッセイをお届けします。

  • 情報掲載日:2019.10.18
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。
イラスト:中本千晴
イラスト:中本千晴

水割り。カラオケ。カレーの無限ループ

『スナック ルノアール』の“野菜カレー”

 いま熊本のグルメシーンはやたらとカレーが熱い。ブームとひとくくりにできないくらい、新店のカレー屋は増え続けている。スパイスを効かせたものや、一皿で2種以上が楽しめるあいがけ、アジアの屋台グルメを連想させる香辛料たっぷりのものなど、個性際立つカレーが多く、それらは見た目も申し分ないくらいべっぴんで、次々に「私を食べて」といってくる。食べてと言われたら、なんとなく「ほかの子がいいな」、なんて思ったりする。日常生活がそこそこ刺激にまみれていて、人も食べものも、ほどほどの主張を好む私(特集編集担当)が欲するのは、なんちゃない、ふつうのカレーだったりする。

 とある情報紙の取材で出合った『スナック ルノアール』のカレーは、控えめで、やさしい、ふつうの子だった。だいたいスナックで出てくるのは、乾きもんや、お菓子や、フルーツのたぐい。それで十分だったから、「スナックらしからぬ」喜美子ママのおもてなしにおどろいたものだ。「お金もうけより心もうけ」を信条とするママは、お店同様、365日休みなし。カウンター横の小さなキッチンで、大切なお客さんのために、鍋いっぱいのカレーをぐつぐつと仕込み続ける。

 『ルノアール』のカレーに肉は使わない。代わりに使われるのは、こんにゃく、じゃがいも、にんじん、しめじ……すべて野菜。特別な香辛料やスパイスも使わない。「ヘルシーで体にやさしいカレーを食べさせたい」というママの愛情が、とろんとルゥに溶けている。味を染み込ませるために“から炒り”し、包丁でスパッと切るのではなく、スプーンでちぎってそっとすべりこませるこんにゃくは牛すじのような食感で、さっと煮込まれたルゥは野菜のスープを飲んでいるみたい。何より、お酒の味を邪魔しないのがいい。ガヤガヤした店内で、気づけばひとり、夜のしじまに落ちてゆく。ベロアのソファに腰掛けながら、水割り、カラオケ、カレーの無限ループにただひたるのだ。

 若くして母を亡くした私は、取材先で出合う一皿、一品に、自然と「母の味」を探す傾向にあるらしい。むしろ、もう母がつくるカレーより、自分でつくるカレーの味に慣れてしまったけれど。そんななかでいま、私が懸命に生きるこの街に、「ママのカレー」を食べさせてくれる場所があること。そのことが、とてもうれしい。



written by 福永 あずさ
ふくなが あずさ●編集者、ライター。宮崎県出身。自他ともに認めるスナック好き。年に数回、日本の酒場をめぐるひとり旅に出ています。

『スナック ルノアール』は小鉢10品以上と野菜カレーがついた1次会コース(4,000円)が人気。

Information

スナック ルノアール
住所
熊本市中央区花畑町13-26 第一銀杏ビル3F
電話番号
096-354-8881
営業時間
18:30〜ラスト
休み
なし
席数
23席
駐車場
なし
備考
カード利用:可

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