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こだわりシェフのつぶやきエッセイ「ただいま畑へ出かけております」

第3話「いつもここからの気持ちで」

  • 情報掲載日:2020.01.11
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

 2019年も台風・豪雨・猛暑に寒波と異常な気象は食材にとって厳しいものがあった。お付き合い頂いている生産者さんが露地栽培農家が多いという理由もあるのだが、極端な天候で野菜が育たないと、皆さん口を揃えておっしゃる。
 魚などもそうだが、台風やシケが続けば船を出せないので、魚種も収量も少なくなる。「食材は生産者さんから直接仕入れています」と、聞こえはいいかもしれないが安定した仕入れが難しいこともしばしば。それに僕は「今あるものをください」とおまかせで食材をお願いするので、入荷できる時期があれば何もない時期もあるのだ。
 しかしそれが自然本来の姿でもあり、人も食材もその一部に過ぎない。だからメニューを作る時、料理を考えてから仕入れをするのではなく、目の前にある食材で料理を考えるというスタイルに変わっていった。そんないきあたりばったり料理?の中に頼れる存在がいらっしゃる。私の店より車で北に20分。実直の言葉はこの方のためにあると思うほど。堅実なお人柄、鹿央町のここから農園「草野英雄」さんだ。地元の農家さんよりご紹介いただき、お付き合いはもう8年になる。
 無農薬無化学肥料栽培。「(いつもここから)の気持ちで日々農業に取り組む」という農園の名前の由来も草野さんらしい。年間100種類以上の野菜、米、穀物を作る畑は数か所に点在しており、整然と管理がなされていて無駄がない。作物ひとつひとつに手が掛けてあるのが伝わってくる。
 今の時期だと人参、大根、赤大根、コリンキー、春菊、小松菜、つくね芋、ほうれん草、じゃが芋数種、さつま芋数種、かぼちゃ、さと芋などなど。特にこのさと芋をコンソメで煮崩してニラをたっぷり加えバターと生クリームを少量。丸く形を整えて表面をこんがり焼いた、さと芋のお焼きは僕の大好きな料理。もう少し寒くなると登場する京菜やターツァイも楽しみだ。そして特筆すべきはここの野菜たち、露地栽培でありながら1年を通して味がぶれずに安定しているのだ。「職人技だなあ」とつくづく思う。

 それに加え、お付き合いが始まって以来、毎週1回、毎回10種類以上の野菜を欠かさず届けてくださっている。店にとってこれほど心強いことはない。まさに鉄人であり『花小町』の料理を支えてくれている大事なお方。頭が下がります。3つ年上の頼れる長男的存在の草野さん。最近ちょっとシワが深くなってきたこのお顔を見てると、自分もまだまだ頑張んなきゃと弟は尻を叩かれる思いにかられる。
 レストランとは物語。人と人で紡ぐ物語。それはたくさんの「手」と「想い」の上に生まれる。みなさんに新しい1ページをめくってもらえるのが僕たち料理人にとっての幸せなんです。
 2020年がはじまる。今年もどうぞ宜しくお願いいたします。

文/ほんだひろゆき

profile/ほんだひろゆき

花小町オーナーシェフ。
2004年植木町北区役所前に「花小町」をオープン。熊本の食材に向き合い土地独自の料理を追及する傍ら様々なジャンルのシェフたちとのコラボ食事会をはじめ、県外にて熊本の食材とワインの食事会等、精力的に活動する。月曜夜開催の料理教室も人気だ。

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