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エッセイ「ただいま畑へ出かけております」

【こだわりシェフのつぶやきエッセイ】ただいま畑へ出かけております

第1話「驚きと感動に出会う場所」

  • 情報掲載日:2019.11.23
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

驚きと感動に出会う場所

 「ほんだくんねー、自然を理解しないとダメだよ」  唐突に言われたこの言葉。今もなお心に残る。

 お世辞言わない。周りに合わせない。自分以外興味ない。曲がったこと嫌い。半端なこと嫌い。軟派野郎はもっと嫌い。嫌い尽くしで連載スタート。一応僕のコラムデビュー作。
タンクマ編集長より「第一話目はなぜ熊本の生産者さんから直接食材を仕入れるのか?でいきましょう!」
とお話を頂いた時、まず浮かんだのがこの方のお顔。 七城町元田裕士さん。無肥料無化学・自然栽培生産者。ひとことでいえばガキ大将がそのままおっきくなったような人。
 
 春のとある朝、半分しか開いてない目で、元田さんの畑へ野菜の仕入れ。元田さんはすでに汗だくだ。遠くから「好きなのば抜いてってよかよー」と、奥さま鈴子さんの声が聞こえる。いつものごとく、もしゃもしゃ味見しながら野菜を収穫。
腰を上げてあたりを見渡すと、畑のはずれに小さな白い花を付けた野菜がぽつんとこちらを向いている。
「それ大根よ」 鈴子さんが教えてくれた。
花は大根の菜花として使えるが、すでにトウ立ちしてる肝心の大根部分はもう硬くなり料理に使えない。
「それ抜いてよかよ。食べてみて」
食べてって言われてもね、これ食えるの? と内心思いながら大根の土をぬぐい一口噛り付いた。
「シャクッッ・・」
鈴子さんが笑った。「はは、今、ぱちって目が見開いたよ。目がさめた?」

「おお、すげーッこの大根! 今までの知ってる大根じゃない!!」

 もちろん大根の周りは硬くなってしまっているのだが、その中心部。大根の生命力あふれる力強さ、しっかりと蓄えられた水分のみずみずしさ、余分なものが一切ない。華やかな香り。土の鼓動感じる正に「生きた味わい」が口の中いっぱいに広がった。

 大鍋を頭にかぶってすりこぎでゴーーン! と叩かれたような衝撃をうけ、目から菜花。いや、火花だ。パチパチ出てしまった。近くでそれを見ていた元田さん。
「ほんだくんねー、自然を理解しないとダメだよ。そしたらさー、料理がガラッと変わるから」そう言われた瞬間、僕は黙り込んでしまった。今もいろんな生産者さんの所へ足を運ぶ理由は、きっとこの衝撃を探しているからかもしれない。実際こんな衝撃を熊本で幾度となく体験してきたし、「知ってしまった喜び」を一度味わうともうそこから抜け出せない。これをきっかけに自然の成り立ちを意識しだしたのは確かだ。

 熊本にはまだある。もっとある。きっとある。それを見たい、知りたい、感じたい。だから直接仕入れは欠かせないし、やめられないのです。今日も愛車のサンバーバンに乗って食材探しに明け暮れます。インスタカメラを回しながらね。


文/ほんだひろゆき

【Profile】ほんだひろゆき

花小町オーナーシェフ。
2004年植木町北区役所前に「花小町」をオープン。熊本の食材に向き合い土地独自の料理を追及する傍ら様々なジャンルのシェフたちとのコラボ食事会をはじめ、県外にて熊本の食材とワインの食事会等、精力的に活動する。月曜夜開催の料理教室も人気だ。

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