「働き方改革、知識・技術の共有で農業人口の増加を目指します」
『田中農園』田中 高毅さん(写真右)


技術革新の裏で変化する農家の働き方
生産者インタビューを重ねていく中、技術の進化をめまぐるしく感じる今日この頃。さらに、大きく変化しているのが「働き方」だ。寝食を惜しまず、朝から晩まで畑で働いていた時代とは一変し、休日もしっかりと取れる、心身共に健やかに過ごせる農家が増えたように感じる。その裏には、経営者のみなさんの考え方の変化が大きいようだ。今回お邪魔した『田中農園』の代表・田中高毅さんもその中のひとり。西区松尾町にある95アールのビニールハウスでナスを作っている農家だ。
「父の代からナスの生産がスタートし、両親の働く姿を見てきました。苦労している姿を見て、楽をさせてあげたい……と思ったのがキッカケです」。とはいえ、当初は農家になる予定はなく、一般企業へ就職。畑違いの業種の営業職に就いた。5年ほど経った頃、父・博文さんの努力から、収入も上がり安定した経営が出来ていたことも後押しし、前述の思いから就農することを決意したと言う。「農業高校で勉強はしましたが経験はゼロ。父にしっかりと基礎を学びながら、私自身が持っていた経営系の知識を活かし、技術向上の面と合わせて取り組むことに。この地域は30代の農家が多いこともあり、仲間たちと技術の共有をしながら……という感じです」。
ゼロからのスタートの中、田中さんが目指しているのは、「誰でも出来る農業」「農業人口の増加」だ。その実践として「働き方改革」と「技術向上」、「ITの導入」などを行っている。
『田中農園』で働くスタッフは、社員とパート従業員の計6名。年間180トンのナスを出荷している。「17時にはその辺で犬の散歩をしていますよ(笑)」と田中さんが話す通り、繁忙期を除いては定時で終了。日曜も休みが取れる。子育てママも働きやすい環境が整っているのだ。さらに、「この作業は何のために行うのか」など、結果・目標から逆算した話をよくするという田中さん。それは、「誰でもなれる農業」を目指しているから。ただ目の前の作業をこなす毎日よりも、結果を考えて取り組むことで、スタッフのモチベーションも上がり、さらに就農のキッカケにもなるという。

ITの導入で行う「見える化」は施設園芸農業の常識!?
「生産性を高め、美味しい農作物を作るためには、光合成が一番大事。天気や気候は一定ではありません。いかに悪条件をクリアするかが栽培管理に欠かせない課題です」。農業は天気との戦い。ビニールハウスなどの施設園芸農業では、ハウス内の温度や湿度等の環境管理の徹底が求められる。そこで導入されるのがITだ。「経験と勘では、誰でも農家にはなれません。『プロになるには30年はかかるよ』なんて聞いても農家になりたいとは思いませんよね? そのためにも、施設園芸農業の世界ではIT化が常識になってきています。データと実績から導き出す管理方法を新規就農者の方々はベースにして、安定した出荷、収入を得てもらいたいと考えています。親から子へ技術を継承していく時代とはスピードが違います。1年ごとに発展するためにも情報の共有は欠かせません」。
その思いもあり、同業者による施設の見学はもちろん、小学校の課外授業など、出来るだけ受け入れるようにしているという。

みんなwin‐winに。
農業人口増加に向けた地域単位での動き
実は、父・博文さんは、地域で立ち上げた農業組合法人『うめどう』の代表理事をしている。高齢化による耕作放棄地の増加が課題だった松尾地区では、なんとその土地を一括で借り上げ集約。若手農家が作業をし作物を出荷することで、地主も収入が得られるという流れを作っている。自分の畑以外の作業が加われば労力も倍増。働き方改革ではないのでは?と考えてしまうが、そこはご安心を。「農地を集約しているし、共同で一気に作業ができるため、労力も最小限で大丈夫なんです」。新規就農の希望者がいれば、その土地を借りてもらうというから、しっかりと受け継がれるだけでなく、地域みんなの幸福度アップにも繋がるというわけだ。
明確な目標に向かって歩み続ける田中さん。主力商品でもある〝でこなす〟の出荷量増加に加え、自社農園で新たにチャレンジ中なのが、3種類のイタリアンナスの生産だ。均等なサイズ・形、最大限に引き出した美味しさ、品質が安定すればもう出荷は目の前。「正直、マニュアルを作っても〝3年前はひと昔〟です。ナスはとにかくのびしろがある品種。せっかくナスばかり作っているんだから、ナス農家として突き詰めていきたいと考えています」。最後に、ナス愛あふれる言葉をもらえた。

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田中農園株式会社
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