
天草の「﨑津集落」をぶらり散歩
約120の島が浮かぶ天草諸島は、250年におよんだ禁教の歴史のなかで独自の信仰を育んだ潜伏キリシタンゆかりの地。世界文化遺産登録で注目の﨑津集落を歩いてみた。

静かに凪いだ﨑津の入り江。ここはかつて貿易や流通の拠点として賑わった港町だ。明治~昭和の文人らが訪れた旅館の跡など、往時をしのばせる遺構も数多い。

ひしめき合う漁師家の間にのびるのは、「トーヤ」という名の細い小径。遠く離れた漁場へ向かうため、まだ暗いうちから船に乗り込む漁師たちの生活路だ。

海側から眺めるとテラスを備えた家が多いのに気づく。地元の人が「カケ」と呼ぶこの設えは、魚網の補修や魚の水揚げといった作業に使われるもの。あるときは干物が並んでいたり洗濯物がはためいたりと、この町の日常がうかがえる。

道の真ん中でうたた寝する猫に癒されながら歩いていると、屋根の隙間からグレーの小塔が顔をのぞかせた。「﨑津教会」は日本でもめずらしい畳敷きの教会で、地元の信徒たちにとって大切な祈りの場所だ。
約450年前、南蛮文化とともに伝来したキリスト教は天草各地で花開き、﨑津にも多くの信徒が生まれた。その後、訪れたのが約250年にもわたる禁教の時代。信徒たちは表向きは仏教徒や神社の氏子を装った「潜伏キリシタン」となり、土人形や貝に現れる模様を聖母マリアに見立てるなど、港町ならではの工夫を凝らし、独自の信仰を受け継いだという。


キリスト教の伝来・反映から弾圧、復活までの流れに思いを馳せるなら、天草市下島の教会や資料館をめぐるのもおすすめ。ダイナミックな自然やこの地ならではのグルメも堪能してみよう。
【﨑津教会】について
鉄川与助が手がけたゴシック式の教会。
庄屋跡に建てられ、禁教期に当時潜伏キリシタンを割り出すために「絵踏み」が行われた場所に祭壇が置かれている。教会行事の日もあるため、中の拝観は要予約。
【問】095-823-7650(長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター
Information
﨑津教会
- 住所
- 天草市河浦町﨑津539
- 問い合わせ先
- 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター
- 問い合わせ先
電話番号 - 095-823-7650
- リンク
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長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター