
『シティーハンター』で知られる漫画家の北条司が総監督を務める実写映画『エンジェルサイン』の公開に先立ち、鶴屋百貨店東館にてトークショーが開催された。サイレントマンガオーディション入賞5作品と北条司描き下ろしのエピソードで構成されたサイレント映画になっている。そのうちの一作品、阿蘇を舞台に撮影された『別れと始まり』に出演した緒形直人さん、菊池桃子さんも登場。
Profile





セリフがないからこそ
言語や国境を越えてお互いが解りあえる
なぜこの映画を?
堀江信彦(以下、堀) 藤子不二雄Ⓐ先生から伺った話です。もともと映画を作りたい人たちが、お金がなくて映画の絵コンテを大小つけて、今の漫画の形ができたそうです。漫画と映像は、とても近しい関係。「映画で表現できないことと漫画で表現できないことを足せば、もっと可能性が広がる」と考えました。今作で伝えたいのは、「かけがえのない人を失ったことがありますか?」ということです。
北条先生、映画監督への初挑戦、いかがでしたか。
北条司(以下、北) 楽しかったですね。漫画は自分で描かなければいけないけど、映画は絵コンテを渡せば、俳優やカメラマン、照明さんたちというプロがやってくれるから(笑)。
『別れと始まり』は、熊本の阿蘇が舞台ですね。
落合賢 原作の舞台は、ほぼアパートの一室ですが、堀江社長が「南阿蘇鉄道で」と。しかしイメージが湧かず、すぐ高森町へ。トロッコ列車に乗ると、「ここなら映像にする意味がある」と感じました。堀江社長のアイデアを活かし、漫画とは違う面白さが出たと思います。震災がテーマではありませんが、何らかの形で復興に関われたらいいですね。一日でも早く鉄道が直るようにと祈っています。
緒形さんが、出演を決められたきっかけは?
緒形直人(以下、緒) 企画も漫画もすごく面白い。原作は犬とアパートの中にいるだけ。セリフもなく、これで持つのか疑問でした。僕が俳優デビューした『北の国から』では、杉田成道監督から、毎日のように「心を動かす芝居をしろ! セリフも体から出て来る言葉でなければ」と言われました。今回、心で芝居するのが、とても必要。不安もあるが、挑戦しようと思いました。五感に働きかける新しい映画ができたんじゃないかなと思います。日本映画で好きなのが『太秦ライムライト』で、その落合監督の演出や絵づくりにも興味がありました。
菊池さんが手作りシチューを出すシーンは、どんな思いで?
緒 以前シチューのCMやったな(一同、爆笑)。シチューうまいなって。
菊池さんが気を付けたことは?
菊池桃子 セリフのない役も、文字ではない台本も初めて。怖いより、ぜひ挑戦したいと好奇心が勝りました。命に関わる、人間にとって重要なテーマ。何よりも心に焦点を当てて、自分の役割をきちんと果たしたい。落合監督の温かさを感じる作品で、私も参加できて嬉しかったです。
堀 漫画でできない、微妙な感情を表現してくれて。そして、犬の名演技! 緒形さんの号泣シーンで、僕も泣いちゃいました。
緒 いやいや、名優アトムに全部持って行かれました(一同、爆笑)
北条総監督が苦労された点は?
北 外国の監督さんの作品は、一つの世界観として完結し、全体としての流れに乗せるのが難しい。やむを得ず、四苦八苦して編集しました。
堀 監督さんたちに敬意を表し、ネットでフルバージョンを同時公開します。北 フルで見ていただくと、「おおーっ、こういう話だったのか。すごい!」となると思いますよ。
堀江社長の展望は?
堀 熊本国際漫画祭を続けて、若い才能にチャンスをあげたい。今後ずっと、熊本から世界へ発信していくことが大事ですね。

世界100か国以上から応募された7,000ものサイレント漫画から5つ選び、世界各国で名を馳せるアジアの有名監督が映像化。その仕掛け人が、熊本出身である株式会社コアミックスの堀江信彦社長だ。出演者も豪華な顔ぶれが揃い、『プロローグ』、『エピローグ』に松下奈緒とディーン・フジオカ、『別れと始まり』に緒形直人と菊池桃子、『父の贈り物』に佐藤二朗が集結。奇跡の訪れを告げるブルーバタフライと音楽が鍵を握るそれぞれの物語を通して、北条司がひとつの愛の物語を描き出す。