1. Home
  2. トピックス
  3. TANKUMA SPECIAL INTERVIEW vol.41 「新村宗二郎(劇団「前進座」座員・役…

TANKUMA SPECIAL INTERVIEW

TANKUMA SPECIAL INTERVIEW vol.41 「新村宗二郎(劇団「前進座」座員・役者)」

子どもたちに「本物」と「感動」を伝えたい

  • 情報掲載日:2019.09.12
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

子どもたちに「本物」と「感動」を伝えたい

 テレビや映画で活躍する熊本出身の有名人を見ると、「熊本」という共通ワードだけで自然と親近感が生まれ、「がんばって!」「もっと活躍したら嬉しいな」「見ていたら、私もがんばんなきゃって思うようになった」……。こんな経験ありませんか? ここにも、読者のみなさんに応援してほしい役者さんが一人。それが、熊本市出身で、現在東京で80年以上の歴史を持つ劇団『前進座』の一員として活躍している新村宗二郎さんだ。整った顔立ちのイケメン、丁寧な言葉遣いに、清潔感ある佇まい、第一印象は、どれをとっても好印象。どうやら熊本時代はモテモテだったと、同級生からタレコミがあった(勝手に暴露、笑)。そんな新村さんが主役を務める、画家・いわさきちひろさんを題材にした舞台「ちひろ―私、絵と結婚するの―」。こちらの熊本公演が10月14日に決定したということで、PRのために帰熊したところをキャッチし、お話をうかがった。

「役者になりたい」想いを周囲に伝えられずにいた熊本時代

 役者として活躍する新村さん。目指すキッカケは、山田洋次監督の「男はつらいよ」だったという。車寅次郎を演じる渥美清さんの演技力の素晴らしさ、情景のリアルさ、「寅さんは実在の人物かと思ったほど」と、山田洋次監督の世界にすっかり魅了され、「作品に身を投じてみたい」と思うようになったのだ。実に幼稚園の頃の話。
 それから月日は流れ、気持ちは変わらないものの、熊本では生の舞台にふれる機会も少なく、理解してもらえないと考えた新村さんは、なかなか周囲に言い出せない中、高校卒業を期に両親に想いを打ち明け、一旦は大学のメディア学科に進学。「作る」側の勉強を重ねて行く中で、「裏より表にいきたい」と大学を中退し、役者の道へ進むことになったという。
 なぜ舞台に?という質問に、「導かれるように『前進座』へ」と新村さん。なんと、役者を目指すキッカケになった山田洋次監督が『前進座』養成所の特別講師だったこと、その世界感にハマりファンだったという作家・五木寛之さんの作品を『前進座』が公演すること、知人から『前進座』を紹介される……といった、いくつかの偶然が重なり、入座することになったのだ。周囲からは、不安の声があがったが、決意は変わることはなかったという。

『前進座』が持つ使命
新村さんが願う未来

 舞台と言えば「わざわざ行かないと観ることが出来ないもの」。正直、テレビやスマートフォンで見る方が気軽なのは一目瞭然。しかし、「時代に逆行するアナログなもの」の中に、変化しながらも守り続ける古典芸能は、失ってはいけない、何事にも代え難い存在価値があるのだ。新村さんが所属する『前進座』は、歌舞伎を批判的に継承し、「広く親しまれる伝統芸能」を目指し1931年に創立された劇団。まさに、そのことを使命とし、東京を拠点に、全国を巡りながら年間200〜400回も公演を続けている。
 新村さんは舞台の魅力を、こう教えてくれた。「生の舞台を観ること、歌舞伎や時代劇などの古典芸能を観ること、本物にふれることが大事です。役者の息づかい、迫力、緊張感……会場に満ちた熱量を持って帰ってほしい。文化・芸能は心の特効薬なんです」。
 さらに、「芝居はひとりで出来るものではありません。役者や裏方のスタッフなどの協力で舞台は成り立ちます。歌舞伎のようにお客さんが「よ!●●」などと声を上げ、一緒に舞台を作り上げる「総合芸術」を味わうことは、普段の生活に置き換えると「集団行動の大切さ」につながるんです」。学校では学べないリアルさにふれ、さらに感性を磨くことは、子どもたちの将来に大きく影響することは間違いない。無くても生活できる娯楽。ただし、無いと心が寂しくなる、実は欠かせない存在が娯楽なのだ。「そうは言っても、ふれる機会が少ないのは現状。まずは知ってもらい、ふれてもらうために、全国を巡りますし、熊本の子どもたちや若い世代の人たちに、私を通して興味をもってもらえると嬉しいです」。

実在の人物を演じることの難しさと面白さ

10月に熊本公演が決定した『ちひろ』は、多くの人が知る、画家・いわさきちひろさんを題材にしたもの。彼女の28〜30歳の3年間が描かれている。「『前進座』が20年以上前からやりたいと考えていましたが、山田洋次監督ですら『難しい』と実現しなかったほど。原案を元に台本作りを行うのが大変難しく、苦戦しました。しかし、ちひろさん生誕100年のこの年にやりたい!という気持ちが大きく、進めていると、座員の1人がちひろさんの大ファンで、ひっそりと自分なりに台本を作っていたんです」。その台本が面白く、よく出来ていたことに制作陣が驚き、採用したという。偶然と必然が重なって、実現した作品なのだ。
 実在の人物を演じるということは、変えすぎてもいけないが、変えなさすぎてもツマラナイ。しかも、ちひろさんのご主人は作品づくりを行っていた当時、健在(2019年6月24日死去)だったため、新村さんは対談することが出来たという。「緊張しましたが、とても優しくてユーモアのある方でした。完成した舞台を観てくださり、感謝の言葉をいただきました。それが大きな自信に」。尊敬と感謝の気持ちを込めて、事実・史実をデフォルメし、ちひろさん以外は偽名にすることに。リアルな中にエンターテインメント性を加え、大衆に楽しんでもらうことが、劇団が公演をする意味。見えないプレッシャーは、ちひろさんの親族からの感謝の気持ちで、喜びと自信につながり、全国巡業がスタートしたのだ。
 「しかも今回は、ちひろさん役の有田佳代も、私と同じ熊本出身。W主演、熊本出身の2人が熊本で公演出来るという、大変嬉しい機会です。私たちをキッカケに、たくさんの人たちが興味を持って、舞台や芝居にふれてくれたら、とても嬉しいです」。

24時間、365日
頭の中は「舞台」の役者バカ

 終始、きれいな日本語を話し、丁寧に接してくれる新村さん。「いつもこんな感じ?」と意地悪な質問を投げかけてみた。「役者はヒゲを剃り、清潔にするべし。身支度を整えて、いつもスキッとしていなさいと、亡くなった座長・中村梅之助に常々言われておりましたので、芝居でヒゲのある役でもない限りヒゲをのばすことはないですね」。「ただ、ファッションが昔から大好きで、学生時代はバイト代を全て洋服につぎ込む程。それがご縁で、今でも熊本の街なかのお店の方に可愛がってもらっています」。インタビューの場所としてお借りした『Onthebooks』のオーナーは、『ちひろ』の協賛にまでなってくれたと言う。「実は、普段はストリート系が多いです。キャップを被って、でっかい服を着て、どこぞの兄ちゃんみたいな格好で、街なかをウロウロしとっですよ」と、話すうちに次第に熊本弁も出るようになってきた。
 バスケットが好きで、『ヴォルターズ熊本』の試合観戦にも出掛けるし、スニーカーも大好き、聴くのはブラックミュージック……聞けば聞く程、出てくる出てくる。「中身は学生時代のままです」と笑いながら教えてくれた。
 ますます親近感を覚える新村さん。ただ、そこは「役者バカ」(注:褒め言葉)。「プライベートの時間も、無駄なことはないんです。洋服や音楽など趣味を通して流行を知ることは舞台にも活かせます」と話す。頭の中は、常に舞台のこと、お客さんが喜ぶためには……でいっぱいなのだ。ここまでの熱意を持つ役者が立つ舞台。しかも主役! これは『ちひろ』を観に行かない理由はないだろう。

プロフィール/新村 宗二郎(にいむら そうじろう)
熊本市・錦ヶ丘出身。九州音楽幼稚園、尾ノ上小学校、錦ヶ丘中学校、東海大学第二(現・星翔)高校卒業。大学を中退し、2004年「劇団前進座付属養成所」へ入所。卒業後、2007年「劇団前進座」研究生として入座。準座員を経て、座員として舞台を中心に活躍。9月7日NHK「小吉の女房」第6話に出演。
熊本市・錦ヶ丘出身。九州音楽幼稚園、尾ノ上小学校、錦ヶ丘中学校、東海大学第二(現・星翔)高校卒業。大学を中退し、2004年「劇団前進座付属養成所」へ入所。卒業後、2007年「劇団前進座」研究生として入座。準座員を経て、座員として舞台を中心に活躍。9月7日NHK「小吉の女房」第6話に出演。

Information

いわさきちひろ生誕100年 前進座公演 
ちひろ ― 私、絵と結婚するの ―
開催期間
10月14日(月・祝)
開場13:00、開演13:30、終演16:15
会場名
熊本県立劇場演劇ホール
料金
一般5,000円、学生2,000円
※障がい者手帳をお持ちの方・介助の方2,000円
備考
チケットの購入:熊日プレイガイド、熊本県立劇場、熊本市民劇場、写真の司、長崎書店

関連記事

SNS