僕が3人いたら成り立たないってのは自分でもわかっていて。
もう殴り合いですよ(笑)—山中さわお(Vo&G)
現れては消え、そしてまた新たに現れ……を繰り返す音楽シーンの中で、活動し続け、ファンを喜ばせ、バンドを継続していくというのは至難の業。そんな中でthe pillowsは来年、活動30周年を迎える。アニバーサリーイヤーに突入した彼らがリリースした最新アルバム『REBROADCAST』は現代的な音でありながらそこかしこに彼ららしさを感じさせる、オルタナ色の強い一枚に仕上がった。フロントマンである山中さわお二、アルバムとバンドの30年について聞いた。

屋外でも楽しめるローファイサウンド
—オルタナ色の強い今作ですが、特にギターの音がよりその色を強くしているような印象を受けました。暴れている印象というか。
劇場版『フリクリ』のサウンドトラックのレコーディングも同時にやっていたんですよね。なんか、いっぺんに色々やりすぎて時期とかもうよくわかんなくなってたんですけど(笑)。で、18年前の前作を久しぶりに聴いたりしてました。あとはアメリカで先に映画が公開になるっていうのがあったので、アメリカのファンが久しぶりのピロウズを聴いた時に、一発かましてやりたい気持ちもあった。ピロウズの真骨頂であるオルタナサウンドでやりたいと思ったんですね。そういった要素が今回のサウンドメークに影響してるのかもしれないです。90年代後期とか00年代は今よりもっと暴れた音でレコーディングしていて。そういうローファイサウンドで4〜5枚作った時に世の中的なブームというか、流れが変わってきて。CDを聴かずにMP3を聴く時代に入っていったんです。その頃から少しずつハイファイを意識するようになってきて、最近の4〜5枚はハイファイで録ったので気が済んだというか(笑)。例えば電車の中とかってローファイサウンドをMP3で聴くと聴き取りにくかったりするんですけど、屋外でも楽しめる範囲のローファイサウンドにしたいって思い始めて。だからここ最近のピロウズからいうと、ちょっと暴れた音になったのかな、っていう。
—来年には結成30年を迎えます。いろんなバンドが現れては消え、ピロウズも様々な決断のシーンがこれまでにたくさんあったと思いますが、続いている理由ってなんでしょう?
そうですね。こんなに長くやるとは思ってなかったですね。そもそも、メンバーと仲良くないので。プライベートとかでは全く合わないんですよ。好みとかも合わないし。
—そういうと語弊がありますよ、30年続けてるのに(笑)
そっか(笑)。でも実際、歳も結構離れてるし、そういう関係性で続けられているのはもちろんお互いの信頼あってこそでしょうね。信頼があるからこういうこともいろいろ言えるわけで(笑)。2人ともあんまりエゴを出さないっていうのも、長く続けられている理由かも。バンドって、もともと仲がいい友達同士で組んで、それぞれが意見言いあってっていうのが普通なのかもしれないけど、ピロウズはそれだと続いていなかったかも。僕が3人いたら成り立たないっていうのは自分でもわかっていて。もう殴り合いですよ(笑)。そういう点では、2人とも僕が若い頃からある程度バンドのイニシアチブをとらせてもらっていたので。ギターもダメだし、歌もダメだし、レコーディングとか何もわからないし……っていう頃から。ありがたいですね。
